「あ、梓君……」
「なんですか?」
とぼけて聞き返せば、困ったように眉をひそめる先輩。
その姿があまりにも可愛くて、つい意地悪をしてしまう。
「言ってくれないとわかりませんよ」
「だ、だから……」
「だから?」
聞こうと身を乗り出すと、真っ赤な顔で俯いてしまう。
「ち、近いよ……っ」
「ああ、すみません。気になってつい身を乗り出しちゃいました」
「?」
首を傾げる先輩にすっと手を伸ばすと、髪を一房手に取り口づける。
「梓君……っ」
「先輩、シャンプー変えました?」
「……え? シャンプー?」
きょとんと瞳を瞬く姿に堪えきれずにふきだすと、真っ赤な顔で俯いてしまう。
「すみません。いい香りだなって思って」
「この前買ってきたばかりなの。桜の香りって珍しいでしょ?」
香りを嗅ぐという名分のもとに近寄れば、あなたが逃げ出さないのがわかっていてそれを実行する僕。
再び縮まった距離に、先輩は恥ずかしそうに視線をそらす。
「先輩? 顔、赤いですよ?」
「……………っ」
耳元で囁くように呟けば、びくりと震えた身体に、気づけば抱き寄せていた。
「……本当に先輩は危険ですね」
「??」
「僕の理性を崩したのは先輩ですからね」
だからこれは僕のせいじゃないと言い訳して。
見上げた先輩にキスをした。