Trick or Treat?

仲花10

「「Trick or Treat!」」
いつものようにノックもなしに扉を開けたかと思うと、意味不明な言葉を発する大小姉妹に、仲謀の怒りの緒がぷちりと切れた。

「こんのバカ姉妹! ここはお前らの遊び場じゃねえんだって、何度言わせりゃ気がすむんだ!」
「仲謀、お菓子は?」
「……は?」
「お菓子くれなきゃ悪戯しちゃうぞ」

じりじりと、墨と筆を手に迫っていた大小姉妹は、傍らの机にある菓子を見つけて、わぁい! と嬉しそうに微笑んだ。

「お菓子見つけた!」
「これ、もらってくね!」
「あ、ばか! それは……っ」

慌てて止めるも時すでに遅し。
来た時同様の慌ただしさで去っていった大小姉妹に、仲謀ががくりと肩を落とす。
彼女たちが持っていったのは、花が仲謀のためにと作ってくれた菓子だった。

「くそ……っ」
ぎっと唇を噛むと、「仲謀?」と今思い浮かべていた顔がドアから覗きこんでいた。

「花、お前なんでここに……っ」
「そろそろ休憩でしょ? 仲謀とお茶しようと思って」
「あ、ああ」
「あ」
「あ?」

花の呟きにその視線を追っていった仲謀は、皿だけ残った机にまずいと顔をしかめた。

「それは、その……」

「あははは。やっぱり大喬さん小喬さんに食べられちゃったんだね」

「え? 知ってたのかよ」

「ううん。でもさっき、子敬さんにも合言葉言ってたから、もしかしてって思って」

「そうか。……悪い」

「気にしないで。いっぱい作ったから」

そう言って、差し出された包みにくるまれた菓子は、先程大小姉妹に食べられてしまったものと同じ。

「ん? でも、なんか形が違くないか?」
「え? あ、う、うん」
「? なんだよ、なんか意味があったのか?」
「気にしないで」
「言えよ」
目ざとく違いに気づいた仲謀に、花は顔を赤らめ小さく答える。

「……仲謀のだけ、ハート形だったの」
「はあと形? なんだそれ?」
「……っ、他の人とは違うってことだよ」
真っ赤な顔で返すと、仲謀の顔も真っ赤に染まる。

「……くそっ、あいつら!」
花からの想いがこもった菓子の恨みに、仲謀の怒りが増したことは言うまでもない。

Happy Halloween?
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