愛しさが止まらない

斎千8

「……似合うな」
「え?」
ぽつりと漏れた呟きに、千鶴は不思議そうに斎藤を見た。

「一さん?」
「やはりお前は女の姿をしている方が似合う……と、そう思った」

新選組にいた頃は、男所帯に女を置くわけにも行かず、また彼女の存在は秘密裏であったため、男装をしていた千鶴。
出逢った当初から、その所作で女だと分かってはいたが、こうして髪を下ろし、女物の着物を纏った、女性本来の姿に戻った千鶴を見ていると、これが本当の彼女の姿なのだと改めて思った。

「ものすごく久しぶりなので、なんだかちょっと照れくさいです」
うっすらと頬を染めて恥じらう姿は可愛らしく、斎藤はふっと微笑した。

「お前は女だ。何も恥じらう必要などない」
「そうなんですけど……」
盆を抱えて目を泳がせている千鶴を、そっと抱き寄せる。

「俺とお前は祝言を挙げた。故にお前がその姿でいることは、おかしいことではない」

戦いも終わり、斗南へと移り住んだ斎藤は、千鶴と祝言を挙げた。
本当にささやかなものだったが、それでも二人が共に在ることの意味をはっきりさせたい――そう思ってのことだった。
淡々と事実を告げて、女装を肯定する斎藤に、千鶴はくすりと笑むと頷いた。

「はい、私は一さんの妻です」
躊躇うことなく、微笑むその姿に、斎藤がすっと目を逸らす。

「一さん?」
「……いや」
こみ上げてきたどうしようもないほどの愛しさに、腕の中の彼女の眦に接吻を落とす。

「お前は本当に美しくて―――愛おしい」
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