好き、って言って

沖千20

「君が好きだよ。君は? 僕のこと好き?」
熱を分け合い、溶け合って。
そんな中での耳元の囁きに、千鶴は手を伸ばして彼の頬を包み込むと「世界一大好きです 」と伝える。

未来を約束出来ない身体。
どんなに共に居ることを願っても、沖田の身を蝕む労咳と羅刹で力を振るった代償がそれを許してくれないことを知っていたから、彼は千鶴を抱くことをずいぶん躊躇っていた。
二人の絆は後に千鶴を苦しめると、そう知っていたから。
けれども千鶴はその痛みも受け入れると、とうに決めていた。
だから沖田をその身に刻むことを許し、それを望んだ。
たとえわずかばかりの時間しか残されていないのだとしても、千鶴は沖田を愛していた。

愛する人のぬくもりを与えられて、その身に受け入れる。
それはとても幸せで、その幸せを彼に与えられることが嬉しくて、だからこそ後悔なんてしない。
いつかこの幸せが失われても生きていけるように。
彼が悲しみに囚われないように。
千鶴は自分の全てを彼に捧げると、もう一度愛していますと呟いた。

2018ハロウィン企画
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