「友雅……さん?」
朝、目が覚めて。
隣りに眠っていた人に、あかねは愕然とした。
そこにいたのは……幼い少年。
「おや……ずいぶん目線が低いようだが、これは身体が小さくなっているのかな」
「はい。……友雅さん、ですよね?」
外見は大分違うが話し方はよく見知った彼女の夫そのもので、あかねは戸惑いながら幼い友雅を抱き上げた。
「ふふ、あかねに抱きあげられるのは妙な気分だね」
「私もです。でも……」
ふよふよ。
ぷにぷに。
幼児特有のやわらかさに、あかねの頬が緩んだ。
「友雅さん、可愛いです」
「役得ではあるが、ずっとこのままというのも困るね。……どうやら説明してくれそうなものが来たかな」
「え?」
ぎゅっと抱き寄せていると、こちらに向かってくる足音が聞こえた。
「失礼致します。安倍泰明様より急ぎの文が届きました」
女房から文を受け取り手渡すと、目を通した友雅がふぅんと口元を歪めた。
「どうやら他の八葉にも異変が表れているようだね」
「他の八葉にも……って、泰明さんや永泉さん、鷹通さんにイノリくん・頼久さんにもってことですか?」
「ああ。原因は四神にあるらしい」
「四神が?」
泰明の説明によると、アクラムに利用されたことで疲弊した四神が気に影響を及ぼしたから、ということだった。
「そっか……神様も振り回されて大変だったんだよね」
「元に戻るには回復するのを待つしかない、か」
ぱちんと扇を閉じると、さらさらと文をしたためる。
「友雅さん?」
「時に委ねるしか解決方法がないのならば、慌ててもしかたないだろう。それなら心ゆくまであかねとの時間を楽しまなくては」
物忌を伝える文を女房に手渡すと、あかねの膝に寝転んだ友雅に、ふふっと微笑みその髪を撫でる。
「あとで人形遊びでもしましょうか? あ、男の子なら蹴鞠かな?」
「あかねは良い母になりそうだね」
「え!?」
「では今日は母上に甘えて湯あみを共にしてもらおうか」
「自分で入ってくださいっ!」
顔を真っ赤に染めたあかねに微笑んで、その頬を撫でようとした自分の手の小ささに友雅は苦笑した。