以前と変わったこと――それは瞬兄との関係。
兄のような存在――それは変わらない。
けれどそれだけじゃない。
芽生えた想い、重なり合った想い。
瞬兄が傍にいてくれるのは嬉しくて幸せで……でも少しだけ恥ずかしい。
「ゆき」
名前を呼んで、微笑んでくれるその顔が。
「ゆき」
名前を呼んで、手を取る節めいた指が。
「ゆき」
低い、心から安心できるその声で耳元で囁かれる時、ゆきはたまらなく恥ずかしくなる。
「…………っ」
「ゆき?」
「……瞬兄、またわざとしてるでしょ?」
過保護なまでに優しいのは昔から。
けれども見つめる瞳はもう想いを隠すことはなく、愛しいと想いを素直に口にするようになった瞬に、ゆきはほんのり頬を染めて目をそらす。
「あなたを愛おしいと思う気持ちは偽りないものです」
「…………っ」
「……そうやってあなたが可愛い反応を見せるから」
「え?」
「いえ。……あなたが口にするなというのならばやめます」
「……ううん。嫌じゃないの。恥ずかしいだけ、だから……やめないで」
「ゆき……」
頬を染めて、それでも想いを告げることはやめないでほしいと告げるゆき。
そんな可愛らしい姿を見せられて抱きしめずにいられる男がいるだろうか?
腕の中に感じるぬくもり。
ほのかにかおる花の香り。
ここにゆきが確かにいるのだと、そう感じられて喜びが満ち溢れる。
始めからないと思っていた彼女との未来。
自分が彼女と兄弟同然に育てられたのは、訪れる運命の日に彼女が使命を全うできるように支えるため。
そしてそれを見届けた時、自分が消えることはとうに覚悟できていた。
けれどもゆきは、瞬が消えることを望まず、自らの命を削っても瞬を求め、未来を切り開いてくれた。
この世界に戻った時、瞬がどれほどの喜びを胸に抱いていたか、ゆきはきっと知らないだろう。
隣りで眠るゆきの瞳が、自分を映すその瞬間をどれほど心待ちにしていたのかを。
「俺はずっとあなたへの想いを胸の奥に封じてきました。だけどもう隠す必要はありません。だからゆき、これからはあなたに伝えたい」
どれだけゆきを愛しているか……その想いのすべてを。
「あの……少しずつ、でいい? いっぱいは……恥ずかしくて……」
恥ずかしそうに目をつむるその姿は、家族として接していた時には見れなかったもの。
それが嬉しくて、瞬は腕の中の少女の頭に軽く口づける。
「そうやって少しずつ、俺を意識してください。――兄ではなく男として」
望むことさえ許されなかった願いを口にして。
拒まれることのない幸福に、瞬は奇跡のような現在を愛しげに包み込んだ。