「総司さん!」
「ゆきさん、こんにちは」
「こんにちは。遅くなってしまってすみません」
「いいえ。学校があるんですから、遅くありませんよ」
「でも、いつも総司さんを待たせてしまってます」
「気にしないでください。僕がゆきさんを待ちたいだけですから」
「でも……」
ゆきは高校生、総司は大学生と、学年どころか学校さえ違う二人。
それでも少しでも会いたいと、互いの時間を合わせて待ち合わせているのだが、どんなに急いでもいつも総司を待たせてしまい、ゆきはずっとそのことを気にしていた。
「待ち合わせ、やっぱり場所を変えた方がいいかもしれません」
「どうしてですか?」
「だって、ここだと総司さんに寒い思いをさせてしまいます」
学生である身故、カフェなどで待ち合わせる事も出来ず、公園で待ち合わせることの多い二人。
けれども夏や冬は待たせるには忍びない場所だった。
「僕は寒くはありません」
「でも、総司さんが風邪をひいたら……」
「ゆきさん。確かに以前の僕は呪詛された朱雀を使役したことで身体を衰弱させて、死にました。けれども元々は丈夫な方でしたし、今は何ともありません」
総司がこの世界に転生する前、二人が出逢った世界で総司は近藤達に命じられるまま呪詛を受けている朱雀を使役し、身体を蝕まれ、ずっと体調を崩していた。
その彼を知っているゆきは、どうしても今でも総司の身を気にかけていた。
「でもやっぱりずっと外で待たせているのは心配です」
「だったら、ゆきさんを迎えに行ってもかまいませんか?」
「え?」
「僕がここで待ち続けていることが心配なら、動いているなら大丈夫ですよね?」
「えっと?」
「僕も少しでも早くゆきさんに会えるなら、その方がずっといいです」
「でも、総司さん大変ですよ」
「この世界はとても便利な移動手段がありますから大丈夫です」
総司がいた世界は、基本的な移動手段は自らの足。
しかしこちらにはバスや電車といった便利なものがあり、ゆきのところへ出向くのもさほど時間を割かれるものでもなかった。
「……わかりました。お願いします」
「はい」
提案に折れたゆきに微笑むと、そっとその掌を包む。
「総司さん?」
「少しだけ冷えてしまったので、ゆきさんに温めて欲しいんです」
「はい。あ、手袋外しますね」
「それだとゆきさんが冷えてしまいます。このままで大丈夫です」
白い手袋に覆われた手を繋ぐと、ほんのりと色づく頬が可愛くて。
こんなに可愛い彼女を見れる口実になるのなら、待ち合わせ場所はそのままの方が良かったのではないだろうか、そんなことを総司は考えた。