「この前はごめんなさい、龍馬さん」
「ゆき、なんのことだ?」
「あのね? 初めて龍馬さんに会った時、いきなり抱きしめられ……」
「なに? 坂本……お前そんなことを……!」
「おわっ! ちょっ……落ち着け! 俺はただ懐かしくてだな……」
拳を握る都と、鉄面皮の瞬に、龍馬が慌てて言い訳する。
「都。話は最後まで聞け。――ゆき、続きを」
「うん。いきなり抱きしめられてびっくりして……だから前に瞬兄に教わった方法で対処しちゃったの」
瞬が幼いゆきに教えた方法。
それは、膝を屈めて思いっきり頭突きするというものだった。
「ゆきは全然悪くない。むしろもっと叩きのめしてやればよかったのに」
「おいおい」
「でも、龍馬さんは怨霊に襲われてた私を助けてくれたんだし……」
「あの時は俺もつい嬉しくて抱きついちまったからな。すまなかったな、お嬢」
「ううん。ありがとう、龍馬さん」
やんわりと話がまとまっていく後ろで。
しっかり要注意人物リストに龍馬の名を刻んでいる瞬だった。