孤高の男性

柊千1

「私といてあなたは幸せになれるの?」

そう問う千尋に言葉を失う。
星見の力を受け継いでいた彼には、この先の未来が見えていた。
そう……千尋の傍らにはいない、自分の姿が。
それが定められた未来ならば……と、いくつもの異なる世界を見知っていた柊は、その先の共にある未来をとうに諦めていた。

そんな自分に対して向けられた、まっすぐな千尋の問い。
未来を知るはずもなく、定められていると知ってもなお、自分の力で運命を切り開こうとする千尋が、柊にはとても眩しかった。

「私の幸いは、我が君の御世を築くことにあります。どうぞご心配をなされぬよう……」
「それでは答えになっていない。あなたは……」

真なる想いと、誤魔化された答えに、千尋はなおも食い下がるが、柊は優しく微笑むだけだった。
“千尋が白龍を呼び出し王となる”。
それは確かに柊の望みであった。幸せでもあった。

だが、共に過ごせば過ごすほど、それを叶えるだけでは満足しきれない自分がいることを、柊は感じていた。
“出来ればずっと、この方と共に……”
口には出来ない、切なる願いのような思い。
ただ、それを夢見るには、あまりにも柊は知りすぎていた。
既定伝承に抗うことは出来ないという事実を。
だから、柊は笑みでその場を誤魔化す。

(私が我が君のお傍にいられる間は、ずっと幸せですよ……)
心の中で真意を呟き、柊は千尋を自室へと促した。
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