じ~っと見つめる視線を感じ、アシュヴィンが振り返る。
そこにいるのは、彼の愛しい后である千尋。
「どうした? 今さら惚れ直したか?」
「ち、違うよ!」
アシュヴィンの揶揄する言葉に、千尋が顔を真っ赤に染める。
「じゃあ、何をそんなに見つめていたんだ?
后殿?」
にやりと口の端をつり上げて問うアシュヴィンに、千尋は逡巡するとおずおずと口を開く。
「あの……アシュヴィンは、その、髪、ほどかないの……?」
「髪?」
何を問われるのかと思えばあまりにも些細な内容に、アシュヴィンは瞳を見開き千尋を見る。
「えっと……髪、いつも編んであるのしか見たことないから……ちょっとほどいたところを見てみたいかな~、と思って」
「お前が見たいというのなら、いつでも見せてやるものを」
言って三つ編みをほどく。
促され、千尋がおずおずと髪に触れる。
「……柔らかい。それにサラサラしてて」
もっとごわごわしてるのかと思いきや、アシュヴィンの髪は赤子の毛のように柔らかく、指に絡めるとさらさらと流れる。
髪に触れながら感動する千尋に、アシュヴィンは苦笑をもらして抱き寄せた。
「ご満足いただけたかな? 后殿」
「うん! ありがとう、アシュヴィン」
無邪気に喜ぶ千尋の耳元で、そっと囁く。
「でも、他の者にはこんなことを言うなよ? 誘っていると勘違いされるからな」
「えぇ!?」
「髪をほどくのなんか、風呂に入るか寝る時ぐらいのものだろう?」
言われて、千尋が耳まで赤く染めて、こくこくと頷く。
「それでは、后殿には責任もって付き合ってもらおうか?」
「え……ちょっと、まさかこんな陽の高いうちから……!?」
「誘ったのはお前だろう?」
告げられ、押し黙る千尋に、アシュヴィンは笑いを喉の奥でかみ殺すと、千尋を抱きあげて部屋へと戻って行った。