髪をほどいたら

アシュ千5

じ~っと見つめる視線を感じ、アシュヴィンが振り返る。
そこにいるのは、彼の愛しい后である千尋。

「どうした? 今さら惚れ直したか?」
「ち、違うよ!」
アシュヴィンの揶揄する言葉に、千尋が顔を真っ赤に染める。

「じゃあ、何をそんなに見つめていたんだ?
后殿?」
にやりと口の端をつり上げて問うアシュヴィンに、千尋は逡巡するとおずおずと口を開く。

「あの……アシュヴィンは、その、髪、ほどかないの……?」
「髪?」
何を問われるのかと思えばあまりにも些細な内容に、アシュヴィンは瞳を見開き千尋を見る。

「えっと……髪、いつも編んであるのしか見たことないから……ちょっとほどいたところを見てみたいかな~、と思って」

「お前が見たいというのなら、いつでも見せてやるものを」

言って三つ編みをほどく。
促され、千尋がおずおずと髪に触れる。

「……柔らかい。それにサラサラしてて」

もっとごわごわしてるのかと思いきや、アシュヴィンの髪は赤子の毛のように柔らかく、指に絡めるとさらさらと流れる。
髪に触れながら感動する千尋に、アシュヴィンは苦笑をもらして抱き寄せた。

「ご満足いただけたかな? 后殿」
「うん! ありがとう、アシュヴィン」
無邪気に喜ぶ千尋の耳元で、そっと囁く。

「でも、他の者にはこんなことを言うなよ? 誘っていると勘違いされるからな」

「えぇ!?」

「髪をほどくのなんか、風呂に入るか寝る時ぐらいのものだろう?」

言われて、千尋が耳まで赤く染めて、こくこくと頷く。

「それでは、后殿には責任もって付き合ってもらおうか?」

「え……ちょっと、まさかこんな陽の高いうちから……!?」

「誘ったのはお前だろう?」

告げられ、押し黙る千尋に、アシュヴィンは笑いを喉の奥でかみ殺すと、千尋を抱きあげて部屋へと戻って行った。
Index Menu ←Back Next→