異世界で共に戦っていた仲間たちが茶吉尼天を追いかけ、この世界にやってきてぶち当たった大きな問題。
それはーー多額の出費という将臣たち学生がクリアするには難があるものだった。
「兄さんと俺のを貸したとしても数に限界があるし、明らかに体格の合わない人もいる。滞在期間だってどれぐらいになるかわからないんだ。服は必須だろ?」
「リズ先生と白龍は二人より背が大きいから、借りるのは無理だよね。ヒノエくんも好み合わなそうだし」
「服の好みぐらい我慢させろよ。食費だってばかにならねえだろうが」
「今ある食材でももって二日。買い出しは必須ですね」
有川兄弟と望美は顔を見合わせると、揃って深くため息をつく。
「……お前、貯金どれぐらいある?」
「俺はお年玉を貯金していたぐらいだから服代ぐらいしか……兄さんこそバイトしていたんだからあるだろ」
「おいおい、俺がシュノーケリングのためにどれだけ切り詰めて貯めたと思ってるんだよ」
「仕方ないだろ。母さん達に本当のことを説明も出来ないんだから」
幸いにもこの世界に戻ってきたら、母は単身赴任中の父の元へと出かけており、当面彼らを匿うことは問題なかったが、当然二人分を予期して置いてある食費で足りるわけはなく、貯金を削るしかなかった。
「望美、お前はどうなんだよ?」
「う……この前新しい服買っちゃったから、あんまりもってなくて」
「おいおい、人生設計ぐらいちゃんとしとけよ」
「そういう将臣くんはしてるの?」
「二人とも、論点がずれてますよ。ひとまず俺がお金を出しますから、服を買いに行きましょう」
「ごめんね、譲くん……」
「いえ、先輩は見立てをお願いします。ヒノエも先輩が選んだものなら文句は言わないと思うので」
「じゃあ、まずは銀行行くか。金をおろさなきゃな」
「方針は決まったかい?」
「うん。まずは私達で皆の服を買ってくるから待ってて」
「だったら俺も行くよ。どんなところか見ておきたいからね。お前らの服を借りて構わないだろ?」
「今日は観光に行くんじゃないんだぞ」
「わかってるよ。自分の拠点回りぐらい把握しないと落ち着かなくてね」
「……サイズが合うかわからないからな」
引きそうもないヒノエに譲はため息をつくと、自室へと連れていく。
「そっか、サイズも測らないとダメだね。将臣くん、メジャーある?」
「確かこの棚辺りに……」
リビングの棚を漁ってメジャーを見つけると、並んでもらって計量していく。
「思ってはいたけど皆背が高いよね。あ、足のサイズも測らないと」
「あ~靴も必須か。後はこの時期だとコートなんかもいるか?」
「こおと? なんだそれは」
「説明するより見た方が早いか」
九郎の問いに将臣はリビングを出ると、父親のコートを持ってくる。
「これがコートだ。防寒着だな」
「こんな薄い布で風雨を凌げるのか?」
「別に行軍に使う訳じゃねえんだ。コートが嫌ならジャンパーだっていいしな」
「じゃんぱあ?」
「あーいい。とりあえず俺らに任せとけ」
こちらとの違いはテレビでも見せれば分かりやすいかとリモコンを操作すると、あらゆるものに驚く九郎や、興味深く関心を持つ景時やヒノエ。
今更ながらに自分達があの世界でかなり恵まれた環境にあったことを悟ると、当面の生活を整えるために望美たちは買い出しに出るのだった。
2020.02.21