あなたと時を刻みたい

景市12

クリスマスイブが別の意味をもってからどれぐらい過ぎただろう。
クリスマスプレゼントと誕生日プレゼント。
二つを手渡した時、彼は目を丸くして多くない?って困惑していた。
だからこれはクリスマスプレゼントで、これは誕生日プレゼントなんですって説明したらしばらく固まって、ちょっとこっち見ないでと顔をそらしながらお礼を言ってくれた。
誕生日を知らなかった彼が白石景之として生きていくと決めた日。
罪を償い、私と歩むと、そう決めた日は彼の誕生日になった。
昨年は共に過ごすことは出来なかったから、猫があしらわれたクリスマスカードとバースデーカードを差し入れた。
けれども今年は彼に直接渡せる。
だから少しだけプレゼントを奮発していた。
カバンに手を入れて箱を確かめて、彼が現れるだろう入り口を見る。
とくん、とくんと規則正しい鼓動は少しだけ早い。
白石さんに早く会いたい、喜んでもらいたいと、逸る気持ちが反映されているのを感じてふふっと笑みがこぼれる。
ーーあ……!

「白石さん!」

長身が目に入るや手を振ると、気づいた彼が走ってくる。
入り口からのわずかな距離はあっという間に埋められて、目の前には待ち望んでいた白石さん。

「白石さん、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう」

プレゼントを紙袋ごと差し出せば、嬉しそうに受け取ってくれて、ごそごそと包装を解いた彼が中身を手に取る。

「時計だ」
「はい。お揃い、です」

頷き、手首を上げれば、その目が凝視する。
昔、ガチャガチャで交換しあったストラップに続いてのお揃いは、少しだけ恥ずかしかったけれど、その何倍も嬉しさが膨らむ。
時計を選んだのは日常使いができるというのもあるが、何より『同じ時間を共有したい』という願いを込めてだった。
今はまだ、限られた時間の逢瀬だけど、彼が罪を償い終えたその時はずっとーー。
そう決意を胸にすると、彼がずっと無言であることに気がついて様子を見る。

「ずっとはつけられないのは分かってます。だから二人でいる時は使ってもらえたら嬉しいです」

彼がつけられない間は、私が彼を思い返すから。
そう伝えると苦しくないぐらいで抱き寄せられて、うん、と小さく頷きが返る。

「君にまた会える時に渡して。ずっとつけるから」
「はい。手入れしておきますね」
「ーーいつか」

小さな呟きは、けれども柔らかく触れる手のひらで見上げることは出来なくて。

「俺から君にお揃いを渡すから」

そう言いながら触れた指先が、薬指を撫でる。
左手の薬指をーー。
その意味が分かって涙がこぼれる。
未来への約束。
それが覆ることはないと信じられるから。

「はい……っ、待ってます……っ」

声が震えることを止められなくて、それでもきちんと答えたくてしがみつく。
Happy Birthday &Merry Christmas。
永遠をあなたに誓うーー。

2020年誕生日記念
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