勝負

ロクナナ35

★こちらは@Pandohran67さんが描かれた創作の裏側を掘り下げ妄想させてもらったものです
元ネタはこちら

今日はロックマンと勝負……じゃない、出かける約束をした日。
もう何度目かわからない、こうした日を一緒に過ごすようになって。
そのたびに心臓の人は大騒ぎで、いつか本当に心臓発作を起こして死ぬんじゃないかと、結構本気で心配しているのに、あいつと言えばしれっと普段となんら変わらない態度なのだから腹立たしい。
どうして毎度こちらばかりが心臓の人を騒がせられるのか。
やはり先に恋したからか。恋した時点で負けは決まっていたのか。
以前読んだ本を思い出してぐぬぬとなる。負けるのは嫌だ。特にこいつには負けたくないというのは恋した今も変わらない。
どうすればこいつに勝てるのか。
同じように心臓の人をお祭り騒ぎにしてやって焦らせたい。
そんなことを考えていると、ふと前を歩く恋人たちに気がついた。
幸せそうに笑い合う彼女たちの間で結ばれている手。
(そうだ、手をつなげばさすがのロックマンも心臓の人がお祭り騒ぎになるんじゃない……?)
私なら確実になる。そう思えばそれは有効に思えて、チラリとやつの手を盗み見る。
……手を、つなぐ。ただそれだけ。
それだけなのに恥ずかしくて汗が浮かぶ。

(さらっと握ればいいだけよっ!)

気合を入れて左腕を捕まえ手のひらを握るが、勢いをつけすぎてまるで抱きつくように寄りかかってしまった。
「ろ、ロックマン、ごめっ、…………ン?」
離しかけた手のひらに指がするりと絡められる。
(なんで手を握るのよ! あれだ、さすがスケコマシ……なんて絶妙な力加減)

先ほどよりもしっかりとつながれた手が無性に恥ずかしくて今すぐ離したいが、自分から離すのはなんだか負けた気がしてそれもできず、ギュッと目をつむり耐える。 一瞬ロックマンの手が震えたように思えたのは気のせいだろう。

「びっくりした。つまずいたの?」

覗きこむようにふわりとほほ笑まれたとたんに、心臓の人はどんどこ大暴れして。

「負けた……試合にも勝負にも……」
「え、なにを突然……」

仕掛けた勝負は今日も自分が負けたと、完敗に打ちひしがれる。
ロックマンはどういう思考回路?と心底わからなそうに首をかしげていた。


◇

驚いた。
彼女から手をつないでくるなんて思わなかったから。
しかも何かに耐えてるのか小刻みに震えてる姿はかわいくて仕方ない。
でもそれをそのまま口にしたら、スケコマシとか罵倒された揚げ句にあっという間に手を振りほどかれるだろう。
だから指を絡めて離れないように確保すると、彼女の肩がびくんと跳ねた。
戸惑いに揺れながら見上げてくるのがたまらない。
彼女の中ではきっとまた勝手に勝負でもしていたのだろう。
でも結果なんて始めから決まっている。 僕が彼女に勝てたことなんて一度もないのに。
「びっくりした。つまずいたの?」なんてとぼけて見せて、君に逃げ道をあげる。
一つ一つ階段を上ってくれているらしいから、本音を言うのはもうしばらく先にしよう。
今は君がくれたぬくもりを大切にしたいから。
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