「わ~コタツ!」
部屋の中で見つけた懐かしい物に、月子は顔を輝かせた。
「へえ、神楽坂先輩ってこういうのが好きなんですね。意外です」
「すぐ寝れるから……」
「え? もしかして神楽坂くん、コタツで寝てるの?」
こくんと頷く四季に、月子と梓が驚く。
「ぬははは~ぬくいのだ~」
「こら、翼。寝っ転がるな。先輩に足が当たるだろ?」
「ぬ? 書記の足、ぬくぬくなのだ~」
「きゃっ! 翼君、ちょっ……」
寝転んだ翼の足が、ちょうど反対側に座っていた月子に触れて慌てると――。
「つ~ば~さ~」
「ぬあっ! パッツンが怒った~! 書記助けて~」
「あはははは……」
梓に首根っこを掴まれコタツから引きずり出される翼を、月子は苦笑しながら見つめた。
「でも翼君が言うように、コタツって暖かくていいよね」
「先輩が欲しいなら、うちにも買いましょうか?」
「でも置く場所ないんじゃないかな?」
洋室にぽつんと置かれたコタツを想像して、月子はふるりと首を振った。
「やっぱりコタツには神楽坂くんみたいに和室の方があうよね」
「ん……」
めったに笑うことのない四季が、月子に微笑み同意する。―――と。
「………!」
「ぬ? どうしたんだ? 書記の顔、まっかっかだぞ?」
「本当だ。どうかしたんですか?」
何でもないふうに翼に同意する梓に、月子は恥ずかしそうに視線を落とした。
コタツの中できゅっと月子の手を握る梓。
しっかりと握られた手は緩むことがなく、必死に目線で梓に訴えるが、返ってくるのは微笑みだけだった。
「ぬぬ? 書記がゆでだこなのだ」
「熱、ある……?」
「う、ううん! 大丈夫だから!」
心配そうに覗きこむ翼と四季に、月子は繋がれてない方の手を振ると、心の中で梓君のバカと呟いた。
* *
四季の家からの帰り道。
まだ顔の熱は冷めず、月子は恨めしげに梓を睨んだ。
「梓君のばか」
「僕を妬かせた先輩が悪いんですよ」
「え?」
思いがけない返答に驚くと、目に映ったのは拗ねた顔。
だけど梓が拗ねる理由が分からず、月子はぱちぱちと瞳を瞬いた。
「あなたはぼくのお嫁さんなんですから、僕以外には触らせないでくださいね……って、前に言いましたよね?」
「あ、あれは……」
「ヤキモチを妬かせたので、帰ったらお仕置きです」
そう言って肩を抱き寄せ、降り落ちた唇。
それだけで再び真っ赤に染まった顔に満足げに微笑むと、梓は車を発進させた。