色づく思い

アサプラ1

「……すごく、すごく贅沢ね」

思わずこぼれた言葉は、間違いなく本心からのもの。
花弁一枚一枚を作ってから重ねるようにくっつけたその花はとても豪華で、これ以上凝った作りが思い浮かばなかったという彼の言う通り、特別なものだった。
私のためだけに作られたもの。
私を思ってアーサーが作ってくれた、この世でただ一つの贈り物。
それを眺めていたら結構な時間が過ぎていたようで、栞を本に戻そうとしたのに手のひらのそれに再び目が奪われる。
本当に綺麗で、何より彼の思いが嬉しくて、こんなに幸せでいいのかと思いかけて首を振る。
犯した罪は何度謝っても許されるものではない。
それでも彼はステイルと共に私を望んでくれた。
栞と共に映りこんだ自分の手首に、ボッと頬が熱を孕む。

『プライド様。俺は、誰よりも強くて弱い今の貴方を欲します。全てを失っても構いません。貴方の騎士であることを望み続けます』

脳裏に再生されたアーサーの言葉が何度もこの胸を熱くする。
二人に与えられた〝欲望〟の誓いは、今の自分を欲し、〝価値〟を与えてくれた。
嬉しくて、苦しいくらいのあの幸福感を忘れることはない。
彼らが自分を求めてくれるなら、何があっても大丈夫だと、そう確信できるから。
ゆらゆらと、心が揺れる。
心に灯った熱がどうしようもなく揺さぶって、また栞に指を伸ばす。

「私の英雄」

呟いて、そっと栞を撫でる。
そこにアーサーがいるように、愛しさが指先から溢れる。
またね、と言えることがこんなにも嬉しい。
消えるはずだった明日が続くことが幸せで、何度もその幸福を噛みしめる。
ジャックの声の後に入ってきた姿を目に留めて顔を綻ばせると、アーサーの顔が鮮やかに色づいた。

20201223
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