似た者同士

ロクナナ7

「奴は確かに女性には優しいけど、それはそれは皆に平等で平等すぎるくらいだし。見境ないわけではないけど、落としにかかっているかというぐらい丁寧に扱うし。でも誰の好意にも応えないから、そこがまた変に女性の期待を集めてしまっているんだと思うんだよね」

ロックマンがモテることについてどう思うのか聞いてみたところのナナリーの答えに、ベンジャミンはニケと顔を見合わせ苦笑する。
今の答えの大半が自身にも当てはまるのだと、目の前の友人はわかっていないのだろう。

「でも今は違うでしょ?」

確かに以前のロックマンは、ナナリーが言ったとおりだろう。
だが二人が付き合うようになってからは、女性に対して優しいのは変わらないが、以前ほど期待を持たせる行動はしなくなったらしい。
それはナナリーもわかっているようで、「まあ……」と口を濁す様子に微笑ましくなる。
どうにも恋愛に疎いこの友人は、ようやくロックマンへの恋心を自覚してくれたのだが、そこからの発展があまりにスロー過ぎて、些か不安だった。
確かに彼女に対しては、あまり積極的に行きすぎてもテンパってしまうのだろう。
そこを見越しているロックマンはさすがだと思うが、やはり付き合って半年はたとうと言うのに、まだデートが二回しかないと言うのはどうなのだろう。
それもナナリーに聞けば、いつもの調子で言い合いをしているうちに、気づくと約束しているのだという。
解せぬと彼女は眉を寄せるが、正しく対処法を知っての確信犯だ。

「そう言えば、またしつこく絡まれてたってウェルディから聞いたわよ」
「あ~……まあ、何とか対処したし、これ以上しつこいようなら、ゾゾさん達も助けてくれるって言ってくれたから」
「ロックマンには相談したの?」
「言うわけないじゃない」
「何でよ」
「仕事のことでアイツに頼りたくないし、自分で出来るし!」

ああ、またいつもの意地になってしまったかとため息をつくと、チラリとニケを見る。
同じく苦笑しながら、諭すようにニケは友人を見る。

「でも、恋人が言い寄られてるなんて知ったら嫌だと思うわよ」

ナナリーだってそうでしょ?と問われると、それはと口をつぐむ様子に、少しは素直になってくれるかと安心しかけた途端、「知られる前に対処する」と残念な返答に頭を抱える。
学生時代から負けたくないという意識が強いナナリーは、やはり恋人になっても彼に甘えられないらしい。
しかしそもそも彼女自身、ロックマンに負けず劣らずモテるのだ。
学生の頃からその鈍さでアプローチに全く気づかず、卒業パーティーのパートナーの誘いも、勉強の邪魔だと会いもせずにすべて断っていた。
今も自分に興味を持つなんて物好きだなんて思っていたりするのだから困り者である。
まずは容姿。
目立つ水色の髪はもちろん、見目だって十分綺麗な部類に入る。
そして性格。
男女身分、分け隔てなく接し、困っていれば手を差しのべ、見返りを求めない。
礼儀正しく勤勉で、ロックマン以外には人当たりも良く……となればモテないわけがないのだ。

「ロックマンも大変ね……」
「は? 何でアイツが大変なのよ?」
「ナナリーが鈍いから」

むぅ、と眉を寄せてわからないと不満そうに唇を尖らせるナナリー。
そう言えば以前、街でたちの悪い男たちに絡まれた時には、巡回中だったロックマンが駆けつけ対処したらしい。
ならばきっと今回も、話を聞きつけて介入するのも時間の問題だろう。

「早くに相談した方がナナリーのためだと思うわよ」
「だから何で」

ロックマンが介入したら絶対に追及されるから、と伝えても納得するわけはないとわかるから、その場合は自業自得としてお仕置きでもされてもらおうと、ナナリーの肩を叩く。

「とりあえずその男が早々に諦めるといいんだけどね」

その方がナナリーにも男にとってもいいと思うが、きっと無理だろうと苦笑うと冷めかけの紅茶を口に運んだ。
後日、ベンジャミンの予想通りになったのは言うまでもない。

20210104
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