二年目のバレンタイン

ロクナナ26

本を睨みつけるように読んでいたナナリーは、バサリとテーブルに置くと深いため息をついた。
読んでいたのはチョコレートの本。
昨年は何の変哲もない板チョコを奪われる形であげるという、乙女にあるまじき失態を犯したため、今年は手作りで渡すと誓いをたてていた。
しかしいざ作ろうとして、何がいいか悩んでしまった。
だって毎年バレンタインには山と貰っていたのだ。あらゆるチョコを食べ尽くしてきたに違いない。
そんな奴にどんなものをあげればいいと言うのか?
そもそも材料からして高級じゃないとダメなんじゃないか?
いや、こんなことで破産は避けたいと思えば、もうどうすればいいのかと項垂れる。

「あ~でもポルカは美味しそうに食べてたっけ」

それなら材料は高級な物でなくとも大丈夫なのでは?
しかしクッキーなどは作ることもあったが、チョコは入学前の幼い頃に、母と父用に作ったぐらいで、それもさすがにレシピは不明。

「持っていくのに形が崩れるものはやめると……」

頭の中に候補を浮かべると、うんと頷く。
先程の本にあったハート型のクッキーやケーキは(それを渡す気持ち的に)ハードルが高い。
それに材料が多いと懐に大打撃だと、予算的なことも考えて決定する。

「よし、前日に作るとして材料はそれまでに用意しなきゃ」

作るものさえ決まれば、後は予定をたてるのみ。
すっかり気持ちが楽になったナナリーは、当日ロックマンと会う約束を取りつけると言う、何より重要なことを忘れていることに気づいていなかった。
後日カウンターにてロックマンから、バレンタイン当日のシフトの予定を聞かれ、それをハーレの仲間にからかわれ、呻く未来を彼女はまだ知らない。

20230304
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