耳元にそっと囁く

原千13

「……まだ照れるのか?」

耳元の囁きに、そんなわけじゃないと答えるが、高鳴る鼓動が囁きを肯定してしまう。
高校一年生の終わりに想いが通じ合ってからも、【教師と生徒】という関係から人目をはばかり、誰も知り合いがいないような場所に出かけて短い逢瀬を楽しむ。
そんな状態を二年間続けていたので、こうして恋人らしく接することにまだ不慣れだった。

「ガキみてえに見境なくがっつきたくはねえが、俺も男だからな。……好きな女が傍にいたら触れたくなる」
「…………っ」

後ろからぎゅっと抱き寄せられての囁きは、ぞくぞくと身を震わせ、内から甘い疼きを呼び起こす。
卒業式の夜……「おまえの全てを俺のものにしたい」と、熱を帯びた瞳で求められて、彼に身を委ねた。
初めてのことに戸惑ったり、恥ずかしくてお風呂に入るまで待ってほしいと我が儘を言ったりもしたが、左之助さんは急かすことなくありのままの私を受け入れてくれた。

だから、普段よりも少し低く囁く声に、彼が何を望んでいるのかわかって鼓動は跳ね上がったが、その腕から逃れようとはせずに身を委ねる。
男らしい大きな掌が頬を撫でて、抱き寄せていた腕に身体の向きを変えられて、近づく気配に目を閉じた。

初めてキスをされた時は、突然のことで驚き、足をもつれさせて倒れこみそうになってしまった。 頭が真っ白になり、彼から与えられる唇の熱さだけを鮮明に感じていた。
それは今も同じで、重ねられた唇が熱くてくらくらする。
彼から与えられる熱をただ受け止めることしかできず、縋るように彼の胸元を手繰り寄せた。

離れた唇に、ぽふんとその胸に力なく縋る。
全身が心臓になってしまったんじゃないかというぐらい、どくんどくんと激しく鳴り響いていて、どうしようもなく身体が熱い。

「千鶴……」

耳元の囁きがさらに鼓動を早めて。
どうしていいかわからずに見上げると、熱を帯びた瞳に囚われ。
再び降り落ちたキスは激しく貪るもので、今度こそその熱さに飲まれて、甘い疼きに身を委ねた。
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