好きという気持ちはどこから来るんだろう。
昔はわからなかった。
東宮として皆を幸せにしたいと、幼い頃からそう思ってきた。
人の上に立つものは周りのもののことを考えなくてはいけない。
そう言われ、また自身が及ぼす影響を知って、ずっと周りに気を向けて、自分のことは考えてこなかった。
そんな僕に彼女は聞いた。
僕自身の幸せは含まれているのかと。
彼女に問われて初めて自分の幸せを考えて……浮かんだのはやわらかで誰よりも心清らかな彼女だった。
このままずっと彼女の傍にいたいと、けれども彼女は天女で帰るべき場所があり、いずれは別れが訪れ、この想いに幕を引かねばならないことはわかっていた。
この優しい時間は得られぬ幻のようなものだと。
けれども、たとえ別れ別れになっても決して彼女のことは忘れないと、そう思った。
それなのにすべてが終わった後も彼女といたいと、たとえそれが東宮の立場を捨てることになっても傍にいたいと願ってしまった。
初めてのわがままは本当に自分のことしか考えていなくて、父や兄へただ頭を下げることしか出来なかった。
それでも願いを諦めることは出来ず、彼女へ手を伸ばした。
あなたが天上へ帰るのなら僕も共にと。
けれども彼女は私が残るよと、この手を取ってくれた。
僕が民へ向ける思いを、兄帝や父院を思う気持ちを大切にして、先んじて笑顔を向けてくれた。
どこまでも優しく、深い心に否を言えなかった。
誰よりも、僕自身より僕をわかって思いやってくれるあなたに、いけないとわかっていても甘えてしまった。
こんなわがままな僕に、傍にいるよと共にあることを許し微笑んでくれる彼女に僕は何を返せるのだろう?
誰よりも幸せにしたい。
誰よりも幸せだと笑っていて欲しい。
決してもう泣かせはしないから。
だからあなたに触れることを許してくれますか?
この想いは色褪せることなく、重ね深くなるばかりで愛しいと、頬に、額にと触れればこの胸があたたかくなるから。
刻まれたあなたへの思いは導べとなって眩く未来を照らす。
だから僕はこれからも前を向いて歩いていく。
大切な、僕の天女と共に。
「あの、彰紋くん……っ、恥ずかしいよ……っ」
「え? だめ、ですか? 僕、もっと花梨さんに触れてたいです」
「……っ」
「花梨さん? 顔が赤い……もしや熱が……?」
「これは彰紋くんのせいだよ」
「僕のせい、ですか?」
「うう……なんかズルい……」