世界で一番幸せなのはきっと…

ヒノ望21

「ねえ、望美?」
「なに?」
ヒノエにせがまれ、照れながらも膝枕をしていた望美は、呼びかけに膝の上の彼を見る。

「俺の一番が熊野だってことに、お前は不満はないのかい?」
「急にどうしたの?」
「いや、あんまりお前が無欲だからさ」

ヒノエの突然の問いに、望美は驚き瞳を瞬く。
愛する者の一番大切なものでありたいと、そう願うのが人の性。
それは望美という、誰よりも愛しい者を得て、ヒノエ自身が知ったことだった。
なのに望美は、ヒノエが自分よりも熊野を一番に思っていていいと、そう言うのだ。

「私は無欲なんかじゃないよ」
「そうかい?」
「それに、ヒノエくんの一番が熊野だって、分かってて結婚したんだし」

否定する望美を不思議そうに見れば、あっけらかんとした答えが返される。

「それにね? ヒノエくんにとって熊野が一番なら、私も入っちゃえばいいんだって気づいたから」
望美はまっすぐにヒノエを見つめると、花開くような素晴らしい笑顔を浮かべた。

「ヒノエくんが熊野を一番大切に思っているなら、私も熊野の一部になればいいんだって。
そうすれば、私もヒノエくんの『一番大切なもの』でしょう?」

「……本当に適わないね」

自分の我を通すでなく、ヒノエの想いを丸ごとすくって、彼の愛する熊野ごと大切に思ってくれる。
そんな望美が愛しくて、半身を起こして口づける。

「本当にお前は最高の奥方だよ。
愛してる……望美」
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