タコパ

ソウヒヨ12

「あ、凝部くん! 今変なのいれたでしょ!?」
「ん~? せっかくのタコパだもん、味変もしたいじゃん?」

忙しそうに生地を流し込み、具を散らせ、丸く整えていくヒヨリの隙をついて手にしたモノを入れると、目敏く気づいた彼女が不安そうに問う。

「……食べられるものだよね?」
「モチロン。ほら」

ささっと丸めて口元に差し出せば、渋々口にした彼女の眉がグッと歪む。

「……不味い」
「あ~ワサビはダメか。なら今度はこっち」
「凝部くんが食べてみなよ」
「まぁまぁ。今度は美味しいから。ね?」

たこ焼きソースとワサビの相性が想像以上に悪かったようで、顔をしかめたヒヨリに今度はもう一つを口元に運ぶ。
躊躇するもほら、と差し出せば諦めたのだろう。再度口を開いてくれた。

「……ん? 甘い? これ、もしかして」
「じゃーん! 正解はチョコレートでした☆」

今度はソースをかけなかったのと、他の具材を入れずに丸めたからか、意外と味は悪くなかったらしい。

「うん、デザート感覚で美味しいかも。ホットケーキミックスを使うともっと美味しいんじゃないかな?」
「おっと意外と高評価☆」
「凝部くんも食べてみなよ」

手元からチョコレートを奪い、生地を流し込んだ上に落とすと、ささっと丸めて口元へ差し出された。
こうなっては嫌とは言えず、大人しく従って口を開けた。

「う~ん、まあ、悪くはないけどね」
「ね? ホットケーキミックスなら餡を入れても美味しいかも」

それではたこ焼きの形をしたただの大判焼きじゃんと思うものの、自分から仕掛けたことなのでそうだね~と頷いておく。

「じゃあ、今度はポテチを……」
「もう味変は終わりです」
「えー!?」
「凝部くんが責任もって食べるならいいけど」
「ならいいや」
「もう」

あっさりと手を引くと唇を尖らせるから、ついという体で啄む。

「んっ!? 凝部くん!」
「唇をつきだすからおねだりかな~って」

真っ赤に染まった頬に可愛いと呟くと、熱々のたこ焼きを押しつけられた。

20201018
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