嫉妬と独占欲

マモヒヨ1

「クリスマスプレゼント、ですか?」

茅ヶ裂さんの言葉を繰り返すと、ええと柔らかく微笑まれて肯定される。

「本当はあなたに聞かずにサプライズにする方がいいのかもしれませんが、やはり喜んでもらいたいので。それで何がいいか聞こうと思いまして」

「嬉しいですけど、でも茅ヶ裂さんが選んでくれるものなら何でも嬉しいですよ?」

「ありがとう。でも、あなたをもっと笑顔にしたいので、よかったら教えてもらえますか?」

そんなふうにお願いの形で甘やかしてくれる優しい恋人に、私はしばらく悩むとぬいぐるみがいいですと伝える。

「ちさきくん、大好きだったんです。落ち込んだときや寂しいときにぎゅっと抱きしめたりしていて……」

ふわふわな感触はそれだけで気持ちを癒してくれたけど、それよりなにより茅ヶ裂さんが私を思ってくれたプレゼントだったから、その思いがずっとあの世界で私を支えてくれていた。
だからその存在を失ったことを少しだけ寂しいと、そう思っていた私から出たその名前に、茅ヶ裂さんはわかりましたと微笑んだ。

「そんなにあなたに大切に思ってもらえていたなんて嬉しいです。……でも、少しだけ妬けるかな」

「え?」

「目の前の僕も、あなたに抱きしめてもらいたいですから」

茅ヶ裂さんの言葉に顔を赤らめると目を泳がせて、上目遣いに彼を見る。

「……私だって茅ヶ裂さんに抱きしめてもらいたいです。ちさきくんはちさきくん、茅ヶ裂さんは茅ヶ裂さんです」

「ありがとう。ではちさきくんを探しましょうか。僕があなたの傍にいれないときに、あなたの心を守ってくれるように」

私の右手をとって指を絡めてくれる茅ヶ裂さんに握り返すとはいと頷いて、彼を見つめて言葉を紡ぐ。

「いつだって茅ヶ裂さんは私を守ってくれてます。今も、あの世界でも」

誰を信じていいのか分からず、皆が疑心暗鬼になる中でいつも手を差し伸べてくれた茅ヶ裂さん。
それがたとえあの世界に私を連れていった罪悪感からだとしても、彼の優しさを疑うことはなかったから。
そんな思いをそのまま伝えると、困ったように微笑まれて、どうしてそんな顔をするのか分からずに戸惑っているとそっと耳元に囁かれる。

「そんなに可愛いことを言われると、今ここであなたにキスをしたくなりました。……しませんけどね」

囁きにさらに顔を赤らめると微笑まれて、言葉が続いて。

「だから後であなたを抱きしめさせてくださいね。僕がちさきくんに妬かないように……僕だけがその唇に触れることができると教えてください」

顔を覗きこんで離れていく茅ヶ裂さんに声にならない呻きをあげながら、繋いだままの指先を握り返すことで了承を伝えた。
クリスマス当日、私に贈られたのはちさきくんと指輪。
驚き見上げた私に、これは僕の独占欲ですと照れくさそうに薬指に通されて、思わず抱きついてしまった私を受けとめながら、茅ヶ裂さんは優しいキスをくれた。

2019年賀SS
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