オムライスと幸せ

孟徳×花

私の故郷の味が食べたいと言われて、こちらでも出来そうなもの……と選んだオムライス。
けれども火を使う前の段階で見事に躓いていた。
それと言うのも、例のごとく興味を持った孟徳が卵を割ってみたいと言ったからだ。
まあ卵ぐらいなら大丈夫かと考えたのが甘かった。
ちょっと殻が入るなんて可愛いものではなく、ぐちょ!と一瞬で原型を失った時には笑みがひきつった。
こうまで破壊されると殻を取り除くことも難しく、そのままゴミと化した卵の残骸にごめんねとものすごく謝ってくれたけど、さすがにもう一度任せるのは無理だと卵を自分で割る。

「ん?」
「あれ? 黄身が二つあるね」

横から覗きこむ孟徳と器の中に浮かんだ二つの黄身に双子だと分かって顔が綻ぶ。
量としてはさして変わらないのに、何だか得した気分になるから不思議なものだ。

「花ちゃん、嬉しそうだね」
「双子だと何だか得した気分になりません?」

ニコニコと頬を緩ませて答えると、ますます孟徳の眼差しが柔らかくなり、箸で卵をかき混ぜ火で熱された鉄鍋に流すと、先に炒めておいたご飯に被せて形を整える。
現代のように容器に入ったケチャップなんかないので、上からソースをかけるが、せっかくなので孟徳の分だけ軽く目と口を匙で書いて、オムライスの回りにソースを添えると、うわあと感嘆の声が上がる。

「これ、顔だよね?」
「私の国ではよくこうやって顔とか文字とか書いてたんです」
「へ~料理に『書く』って面白い発想だよね」

目新しいことに関心を持つ孟徳に、物珍しく眺められて気恥ずかしくなる。
ケチャップほど粘着性がないため、早くもたれ始めていて、オムライスはちょっとグロテスクな代物になりつつあった。

「あ、の……早く食べませんか? 温かい方が美味しいし」
「食べちゃうのがもったいないけど、せっかく花ちゃんが作ってくれたものね」

名残惜しげにもう一度眺めた後に匙を持ってくれたのにホッとすると、花も一口分すくう。
破れずに綺麗に焼けたことに満足すると、ホクホクと湯気が上がるのを見ながら食むと、懐かしい味に眉が下がった。
ポテトチップスなどこちらでも作れる現代料理は結構あり、食材を考えオムライスも可能だと思ったのは正解だったようだ。
雲長のように料理上手とは言えないが、オムライスぐらいなら花でも出来るし、孟徳と二人で暮らすようになって、料理を毎日するようになって手際も少しよくなっていた。

「すごく美味しいよ、花ちゃん」

パアッと華やぐ笑みを浮かべて、オムライスを誉めてくれる孟徳に笑みを返して。
今日も幸せだと、花は心から思った。

今日の孟花
オムライスを作ってみた。卵を割るだけなのに大惨事!もうひとつ、今度は慎重に割ってみると黄身が2つ入ってました。ラッキー!
#今日の二人はなにしてる
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