ホットミルク

凝部×ヒヨリ

「ヒヨリちゃん、どうしたの?」

いつも通り夜更かししていたら、階下に向かう足音が聞こえて、気配を消して覗き込むと、そこには予想外の姿があった。
射落や双巳の年長組は起きていることも多いが、紅一点のヒヨリは早々に幼なじみのトモセに部屋へ戻るように促されるので、深夜に会ったのは初めてだった。

「ちょっと水でも飲もうかと思って」
「なに、寝れないの?」

問えば下がった眉に聞かなくても答えがわかり、キッチンへと足を運ぶ。
冷蔵庫を開けて目的のものを取り出すと、マグカップに注いでレンジに入れる。
チン、と乾いた音に熱くなった持ち手を慎重に手に取ると、何杯?と目を向けた。

「え?」
「だから、砂糖は何杯入れるの?って聞いてるんだけど」
「凝部くんのじゃなかったの?」
「僕はホットミルクよりカフェオレ派かな」

目をパチパチ瞬く姿が可愛く、ほらと促すと『一杯』と返る。

「一杯ね~……と出来上がり☆」
「ありがとう」
「どういたしまして」

ポイッとかき混ぜ差し出すと、マグカップを受け取ったヒヨリがほわりと微笑む。

「眠れない時はホットミルクって言うじゃん?」
「そうだね。コーヒーや紅茶よりいいんじゃないかな」

カフェインを摂取すると眠れなくなるって言うよね、とヒヨリがマグカップに口をつける。

「不安?」
「……うん」

こんな異常な場所に連れてこられて不安がないわけがない。
日中は気丈に振る舞っているが、やはり無理をしていたのだろう。

「凝部くんがいてくれて良かった」
「え?」

予想外の言葉に瞳を瞬くと、マグカップを掲げてヒヨリが微笑む。

「すごく安心出来たから」
「毒が入ってるかもしれないのに?」
「そんなことしないよ」
「媚薬なら入れたけどね」
「え、嘘っ!?」
「うん、嘘」

胸がくすぐったくてからかうと、思った通りに反応するヒヨリが可笑しくて可愛い。

「もう!」
「ほらほら、早く寝ないと気が変わって襲っちゃうよ?」
「な……」
「それとも襲われたい?」

耳に囁くように距離を縮めると、バッと飛び跳ねるように離れたヒヨリからマグカップを奪う。

「これは僕が洗っておくから、しっかり鍵閉めないと夜這いするからね」
「もうっ……ありがとう」
「はいはい、どういたしまして~」

ヒラヒラと手を振ると、振り返してから柔らかな気配が消える。
それを確認してからマグカップに視線を向けると、濡れた箇所を指で拭う。

「……本当にこんなの僕らしくないんだけど」

誰かのために何かをしたことなんて覚えがない。
なのに不安そうなヒヨリに、自然とホットミルクを作っていた。
適当に水で洗おうとして、一度手を止めると丁寧にスポンジで洗う。
ふわりと微笑んだ姿が思い出されて、本当にらしくないと呟いた。

今日のソウヒヨ
最近寒くて寝付きが悪いと言ったら寝る前にホットミルクを作ってくれた。安心する味がする。今日はいい夢見られるかも。
#今日の二人はなにしてる
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